ザ・メイン・エネミー

CIAとKGBの両方からみた冷戦とその裏側を描いたスパイ・ノンフィクション。著者はCIAのエリート畑なのでアフガン戦争、ベルリンの壁崩壊の最前線にいたので当時の事情が細かく書かれている。また大半のスパイマスターたちが冷戦が終わるという時代の変化について来られず、双方とも相変わらずのスパイ合戦をしていた事を指摘する。モスクワで保守派によるゴルバチョフ軟禁のクーデターが起こったときに「それみたことか冷戦は簡単に終わらない」とCIA職員たちが興奮したという不思議な現象が紹介されている。もともと彼らの本当の役割は冷戦を終わらせるためだったはずなのに。

あとKGBとCIAの間に“ガヴリロフ・チャンネル”というホットラインが開設されていたことにも驚く。東西緊張の象徴のベルリンが、双方の監視が厳しすぎたので、まともにスパイ活動ができず、実際は新米スパイを教育する安全な場として「ベルリン幼稚園」と揶揄されていたという。スパイ小説とは違うズッコケの事実。

しかし本書でメインに書かれている、二重スパイの摘発が一番面白い部分だ。通称もぐら狩りは、たとえばCIAがモスクワやワシントンでKGBの職員を協力者(スパイ)にする。ここまではいいとして、問題は彼がアメリカに協力するふりをして実は祖国を裏切おらず反対にこちらの情報を流していないかどうか、要するに三重スパイなのかということだ。

スパイを勧誘して実は逆に相手に勧誘されたりするというウソのような話も出てくる。また逆にCIA職員がソビエトに情報を漏らすと、KGBにCIA協力者の身元がバレてしまい、CIAのスパイ網が壊滅して、二重スパイが捕まるまで再構築ができなくなる。

誰が二重スパイかわからないために部下すら信じられずに、局内の活動が何年も停滞してしまう凄惨さ、裏の裏の裏を読む世界は不条理劇のようだ。

 

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