我もまた渚を枕に 東京近郊ひとり旅

我もまた渚を枕―東京近郊ひとり旅

我もまた渚を枕―東京近郊ひとり旅

「船橋」「鶴見」「大宮」「本牧」「我孫子」「市川」「小田原」「銚子」「川崎」「横須賀」横浜の裏町「寿町」「日ノ出町」「黄金町」「千葉」「岩槻」「藤沢」「鵠沼」「厚木」「秦野」「三崎」。

本書で著者が歩いた街だ。東京近郊であっても用事が無いと出かけない街。増してや歩くなんてなかなかできない。物理的に可能であってもやる人は少ない。

そんな街をてくてくと歩き、立ち止まり、古い商店街を覗き、目立たない文学碑を見つけ、銭湯があれば立ち寄り、気に入った安い居酒屋のカウンターでビールを飲む。そのまま気軽にビジネスホテルで一泊する。翌朝は駅前の牛丼屋で朝定食。古本屋の棚を眺め、歩いてひと汗掻くと、昼からまたビール。散歩というのには距離も時間も長い。健康のためでもなし、観光のためでもなし、珍しいものを見つけるためだけでもなし、ひとりで歩く気軽さ、「出かけること」そのもののために歩く楽しみ。

わたしたちはなぜ科学にだまされるのか

 原題を「VOODOO SCIENCE」という。なんと魅力的なタイトルではないか。いわゆるインチキ科学を斬る書なのだが、単純に笑うあげつらうのではなく非常に啓蒙的である。 中学生や高校生にぜひ読んでほしい。

 有人宇宙開発はやめるべきだという部分は刺激的だ。ガガーリン、アポロ、スペースシャトルと続く一連の開発は、政治的なデモンストレーション以外にはなんの価値もないと断言する。無人衛星の性能があがっているいま、火星や木星へ飛ばして成果をあげているのに、なにも危険とカネをかけて人間を乗せることはないという。あえて人間でないとできないことはなにもないというのだ!うーん単純明快すぎます。

 よく信じられている「高圧電線の下に住む人には白血病が多い」というのも、偏見にみちたジャーナリストと統計の誤った使い方から出てきた結果だということを指摘する。これも追調査で真実が証明された。また サプリメントや磁気治療についての気休めも科学的に解明してくれる。

 いまや暴露された「スターウォーズ計画」のでたらめさと提唱した科学者のダメさや、常温核融合騒ぎの問題点(日本の通産省やトヨタはあとあとまでこの学会に資金を出していた)を科学者の視点、科学者の科学に対する誠実さから語っている。

 そう、ここで語られているのは、科学とはなにかなのである。それは難しい方程式でもインチキなことでもない。それをもう一度知ることは重要なことだろう。信 じられないような発見は起こりようもないというのが結論である。でもひょっとしたら、ということはわたしたちは思ってしまう。作者は科学の考え方をこう述べている。

 新しい科学上の発見だと思ったとき、1.それが実験により再現でき検証できるか 2.それによって万物の予測がたつようになるか このどちらかのこたえがノーであったらそれは科学ではないという。

 それを厳密にするための科学者のルールとして、1.すべてを公開してほかの科学者に自由に実験を再現してもらう 2.自説より完璧、あるいは信頼できるものがあれば、それに自説を放棄しそれに従う

 これらの点は非常にわかりやすく重要であるし、すぐに使える。たとえば、テレビでやっている心霊写真者や奇跡のなんたらとか、ニュースショーのアンケート調査やコメントなど、上記の考えに従っていないものは自然科学であれ、社会科学であれ、それは番組やニュースではなく、ただのエンターテインメントだということがわかるだろう。

 そのことは第2章「信じたがる脳 科学こそ真実を選び出す戦略」にまとめられてある。学生に科学的な考えの必要性を知ってもらうには、この章を科学の授業の第1回に読むのが一番良いだろう。格好のテキストであることは保証する。

 作者は物理学の教授でアメリカ物理学会のワシントン事務所長。いまも毎週 メールマガジン を発行しているので一読あれ。